△スポーツ傷害
2.躰道での主なスポーツ外傷
躰道は選手同士でのコンタクト(接触)は多くはない武道なので、
柔道やフルコンタクト空手、アメフト・ラグビーやサッカーのような
コンタクトの多い武道・スポーツに比べ、外力によっての怪我はそこまで多くはありません。
無論、突き蹴りを受け損なっての受傷は珍しくないですが、
一番多いのが、転技の失敗による受傷です。
これは体操やバレーボールなどでのノーコンタクト(非接触)の怪我と近いものになります。
外傷の受傷箇所は大きく分けると、骨・靱帯・筋肉・皮膚の4つに分けられます。
(無論、これ以外にも受傷する部位はありますが、可能性は高くないのでここでは挙げません)
骨は身体の支柱となっており、その骨と骨を繋ぎ止めるものを靱帯、繋がっている部分を関節と呼びます。
そして、関節を支点として骨を動かしているのが、筋肉になります。
さらに、筋肉の上を覆って、身体の一番外壁を成すのが皮膚になります。
これら4つの外傷についての説明と、躰道で起きる主な外傷を、以下にまとめました。
骨の外傷は、大部分が骨折(骨組織の断裂)になります。
骨折には完全骨折・不完全骨折(亀裂骨折)・開放性骨折(複雑骨折)などがありますが、
躰道では、開放性骨折などの危険な骨折は起こる可能性は少ないものになります。
骨折の治療は、その程度に応じて整復のみの保存療法や手術での観血的な治療しますが、
その多くは整復のみの固定で治療が行われ、問題なく回復することができます。
名称 |
主な症状 |
主な受傷部位 |
主な原因 |
特異的な症状 |
骨折 |
・安静時に鈍痛 ・受傷部位を触ると、 鋭利な痛み ・完全骨折の場合、 骨が動く |
顎 | 突き蹴りの受け | 顎を動かすと ジャリジャリいう |
歯 | 突き蹴りの受け | 歯が抜けたり、欠ける 口内に刺さることもある |
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肋骨 | 突き蹴りの受け | 呼吸をすると部位が傷む 内臓に刺さると危険 |
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中手骨 | 突き蹴りの受け 突きのミス |
手の甲が腫れて傷む 指は動かせる |
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肘(尺骨) | 肘を伸ばしきって手を着く | 肘は動かせることもある (動かしてはいけない) 曲げ伸ばし時に傷む |
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靱帯の外傷は、一般的には捻挫と呼ばれる状態で、靱帯損傷や靱帯断裂があります。
脱臼はこの靱帯の断裂が大きく関わっています。
靱帯の外傷は、回復にも時間がかかり、再発にも注意を払わなければなりません。
特に膝関節の関節内靱帯(前十字・後十字靱帯)は、しっかりと治療しないと選手生命に影響を与えます。
また、下肢の靱帯の外傷は、ある程度のレベルに達した選手がなりやすいものになります。
靱帯損傷・断裂の治療は、その程度に応じて保存療法・靱帯縫合術・靱帯再建術などがあります。
名称 |
主な症状 |
主な受傷部位 |
主な原因 |
特異的な症状 |
靱帯損傷 |
・受傷時、鋭利な痛み ・受傷した関節を動かすと傷む ・受傷部位が腫れる |
肘 膝 |
相手が関節に乗ってくる 関節への攻撃 |
膝関節内靱帯(前十字・後十字)の場合、関節内出血があり、関節が腫れてきて、2〜3日ひどく傷む |
手首 肘 肩 |
転技の失敗(着地時に誤って手を着く) | 肘・肩は脱臼が伴いやすい | ||
足首 膝 |
転技の失敗(足・膝を捻った状態で着地) | 足首が多い 膝は内側々副靱帯が多い 膝関節内靱帯の場合、関節内出血があり、関節が腫れてきて、2〜3日ひどく傷む |
||
靱帯断裂 |
・受傷時、断裂音がある場合が多い ・受傷した関節を動かすと、不安定感がある ・受傷直後は激しく傷むが、しばらくすると痛みは軽減 ・受傷部位が腫れる |
足首 膝 |
転技の失敗(足・膝を捻った状態で着地) | 膝関節内靱帯の場合、関節内出血があり、関節が腫れてきて、2〜3日ひどく傷む |
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筋肉の外傷は、肉離れ(筋組織の部分断裂)や腱損傷・断裂があります。
筋肉・腱の損傷は、回復期の途中で運動を再開してしまうことが多く、
再発の危険性が高い怪我になります。
回復期には動きたくても無理をせず、ストレッチなどをしっかりと行っておくことが重要になります。
肉離れの治療は、保存療法によって行われ、しばらく受傷部位を動かさないように指導されます。
また、『腱』とは、筋肉が骨に付着するためにまとまったものになります。
有名なものでは、腓腹筋・ヒラメ筋がまとまったアキレス腱があります。
腱断裂は、保存療法と手術療法による治療があります。
名称 |
主な症状 |
主な受傷部位 |
主な原因 |
特異的な症状 |
肉離れ |
・内出血がある ・力を入れるとかなり傷む |
下肢 | 突き蹴りの受け | 打撲と区別が付きにくい |
着地時 | 受傷時、パチッ、ピリッという 筋肉が切れた感覚がある |
|||
腱損傷 |
・内出血がある ・力を入れるとかなり傷む |
アキレス腱 | 着地時 | 受傷時、パチッ、ピリッという 腱が切れた感覚がある |
腱断裂 |
・内出血がある ・関節を動かせない、 動かすことが困難 |
アキレス腱 | 着地時 | ボールが当たった様な感覚がある 腓腹筋が硬直する 受傷部分に凹みがある 足首を自力で伸ばせない |
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皮膚の外傷は、裂傷(切り傷)や擦過傷(擦り傷)、打撲になります。
裂傷は部位によっては出血が多くなる場合もありますが、簡単に治ります。
裂傷の治療は、ひどい裂傷においてのみ、縫合手術が行われることがあります。
打撲は皮膚の損傷のみではありませんが、更に分けると解り難くなるので、皮膚の項目にいれてしまいます。
打撲は、骨折や筋・靱帯の怪我を伴っている場合があるため、安易な判断は気を付けて下さい。
名称 |
主な症状 |
主な受傷部位 |
主な原因 |
特異的な症状 |
裂傷 |
・出血がある | 顔面(まぶたの上) | 突き蹴りの受け | 顔面は出血量が多い |
擦過傷 |
・血の滲み | 肘や膝、肩などの関節 | 転技の失敗 | ヒリヒリ痛む |
打撲 |
・内出血がある ・力を入れると傷む |
全身 | 突き蹴りの受け | 腹部では呼吸困難になる 腹部では内臓を損傷している場合もある |